意識があっても容態が急変し死に至ることもある重症火傷。真っ先にとるべき処置は
自力で逃げられた少年がなぜ・・・
楽しいはずの花火大会会場で、
屋台の発電機用のガソリンに引火して爆発、
3名の尊い命が奪われるという痛ましい事故がありました。
犠牲者のうち全身に火傷を負った10歳の少年は、
自力で周辺に逃げ、座って救助を待っていました。
直後には警察官の問いかけにも
はっきりと応えていたといいます。
しかし、少年は4日後に
帰らぬ人となってしまいました。
意識があるばかりでなく、動くことも喋ることも、
とっさの判断をすることもできた少年の身に、
一体なにが起きたのでしょうか。
重度の火傷は痛みを感じない
少年は、全身の70%に火傷を負っていました。
火傷にはⅠ度からⅢ度までの段階があります。
Ⅰ度は皮膚の表面(表皮)の損傷で、皮膚が赤くなり、
熱いような痛みや腫れぼったさを感じます。
損傷が真皮にまで至るとⅡ度となります。
浅達性のⅡ度は腫れだけではなく水泡を生じ、
強い痛みや灼熱感があります。
深達性Ⅱ度では水疱の奥が白っぽくなり、
知覚が鈍くなるため痛みは強くありません。
真皮の更に奥の皮下組織にまで損傷が及ぶⅢ度となると
皮膚は壊死してしまう場合も少なくありません。
知覚を失い痛みは全くといっていいほど感じません。
このように、火傷は重症であるほど
痛みを感じなくなってきます。
おそらく少年も、
重度のやけどを負ったがために事故直後には
痛みを感じていなかったのではないでしょうか。
外見からはわからない肺や気道の損傷
少年と同じ日に、35歳の男性も亡くなっています。
この男性の死因は、
重度の火傷で肺が損傷し呼吸ができなくなる
「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」でした。
高温の気体を吸い込んだ時に、
肺や気道に熱傷を負うことがあります。
外見からは判断できず、
気道が徐々に浮腫を起こして呼吸ができなくなったり、
肺が正常に機能しなくなったりします。
一刻を争う火傷の治療
全身に重度の火傷を負った場合は、
身体の水分が一気に失われます。
血液が循環しなくなり、
受傷部分だけでなく全身へ影響を及ぼします。
臓器へ流れる血液も著しく不足し、
臓器不全から死亡に至ります。
そのため、一刻も早く医療機関へ運び、
適切な手当てを受けさせなければなりません。
救急車の到着を待つ間は、
これ以上火傷が深部に及ばないよう
流水などで冷やします。
衣服が残っている場合は無理に剥がさず、
その上から水をかけてください。
ただし、広範囲を長時間冷やすと
低体温になる恐れがあるので、
患者の様子を見ながら断続的に行うようにします。
水疱ができている場合は、
タオルやハンカチで覆って水疱を破らないように
注意します。
水疱が破れると、細菌に感染しやすくなり、
症状の悪化や命の危険を招きかねません。
家庭内で起きても同様の処置をし、
むやみに油や常備薬などを塗らないようにしましょう。