近年、問題視される遺伝子組み換え農作物。一体どのような点が問題なのか知っていますか?
遺伝子組み換え農作物は漠然と恐れられている?
アメリカ・オレゴン州の農場で、除草剤耐性を持つ
遺伝子組み換え(GM)小麦が発見され、
GM小麦を開発したバイオ会社を農場が提訴する
という事件が発生しました。
現時点では商業栽培が禁止されている遺伝子組み換え小麦が
どのような経緯で発見されるに至ったのか、
まだ解明されておらず、
バイオ会社は法的責任はないと主張しています。
日本でも、TPPに参加した場合の大きな問題点として、
国内で通用しているルールが変更され、
GM農作物が輸入されるようになることが
挙げられています。
しかし一般的に、何のために遺伝子組み換えが行われ、
何が問題視されているのかを正しく理解している人は、
まだ少ないのではないでしょうか。
遺伝子組み換えが行われる理由
これまで農作物の品種改良は、
交配により突然変異的に性質を変化させるものでした。
それに対し遺伝子組み換えとは、
遺伝子の一部を切り取り、並び替えてから元に戻したり
別の生物の遺伝子に組み入れたりする技術を言います。
現在、全世界で生産され流通しているGM農作物は、
除草剤耐性を持つ大豆です。
特定の除草剤に耐性を持つ細菌の遺伝子が
大豆に組み込まれ、除草剤をまいて育てても、
周囲の雑草は枯れますが、この大豆は枯れません。
畑を耕さず、土壌中の肥料が失われたり
農薬が流れ出したりしにくい農法が注目されていますが
この農法では雑草を除くことができません。
そこで、遺伝子を組み替えた
除草剤耐性大豆が誕生しました。
また、日本で認可されているα-アミラーゼという
食品添加物として用いられる酵素は、
元来仔牛の胃に存在するものですが、
天然の生物から生成しようとすると、
仔牛がどれだけいても足りません。
そこで、この酵素を作り出す遺伝子を微生物に
組み込んで、その微生物の組み換え体を培養し、
効率よく大量の酵素を生成することができるのです。
遺伝子組み換えのリスクとは
除草剤耐性大豆は、結果的には除草剤の使用量を
抑えることができるとされています。
しかし、作物そのものが除草剤に強いとなれば、
次第に除草剤を使用することに鈍感になっていくのでは
ないかという懸念があります。
現時点では、GM農作物へ抱く漠然とした不安感から
反対の声が上がっていると言わざるを得ない部分も
ありますが、まだ長期の毒性試験も行われておらず、
当然問題視されるべき点も多くあります。
身体に与える影響、特に、
新たなアレルギー物質となり得るのではないか、
体内に蓄積されてなんらかの変異をもたらすのでないか、
などといった点における評価は、
今後速やかになされるべきです。
また、GM農作物がいずれ自生して、
他の植物と交配する危険性は高く、
冒頭のGM小麦が発見された件は、
懸念されていた可能性が現実となってしまったもの
なのかもしれません。
ひとたび自然界での交配が進めば、
生態系の破壊は避けられないでしょう。