先進国では異例の罹患率。平成の今、日本で結核患者が減らない理由は?
結核は過去の病気ではない
50年ほど前まで、年間10数万人の死亡者を出す
「亡国病」として恐れられていた結核も、
医療が発達し特効薬も開発された現代では、
もはや過去の病気のように思われがちです。
しかし、現代のこの日本においても、
結核は年間2万人の新しい患者が確認されている、
いわば「現役」の感染症です。
そして今も1日あたり6人、
年間で2000人以上もの患者が命を落としています。
無縁に思える結核に、何故かかってしまうの?
つい先日も、都内の病院や那覇市の小学校で
集団感染があったと報じられたばかりです。
結核は、初期症状が明確でなく、現れたとしても
咳や痰など風邪の症状によく似ていますので、
見過ごしてしまうことが非常に多いのです。
それ以上に厄介なことには、結核に感染すると、
免疫のできづらい体質の人や体力の低下している人、
乳幼児などは、そのまま発症する場合がありますが、
ほとんどは悪化する前に免疫ができて、
目に見える症状が出ません。
飛沫感染をした結核菌は、肺の中に入り込み一旦は
増殖しようとしますが、免疫に押さえ込まれると、数年、
場合によっては数十年も、そのまま静かに肺に居座ります。
感染したことにも気付かないまま、
体内に結核菌を「飼って」しまうのです。
そして、加齢や病気、疲労などで免疫力が下がると、
思い出したように発症します。
よもや自分が結核に感染しているなどと
思いつきもしない患者は、普段どおりの生活をして
周囲に結核菌をばら撒いてしまうというわけです。
こんな症状に心当たりがあれば、すぐ病院へ
時代劇では、ろうがい(=結核)患者が喀血しているシーンが
よくありますが、初期段階ではまず見られない症状です。
通常は、咳や痰が2週間以上続いたり、
治ったと思ったらぶり返したりします。
発熱は、あったとしても微熱が続く程度です。
また、倦怠感や体重減少、寝汗などが見られる場合もあります。
医療機関でのツベルクリン反応検査・血液検査・胸部X線検査で
診断を受け、感染があっても医師の指示通り服薬を続ければ、
きちんと治すことができる病気です。
ただし、発病し、なおかつ排菌
(咳などによって体外に菌を出すこと)が始まっている場合は
排菌がおさまるまで入院しなければなりません。
結核の蔓延を防ぐという観点から、
通院にかかる費用の95%、入院は100%が公費で
負担されることが原則となっています。
そのようなことが起きる前に、
日頃から健診を受けておくと安心ですね。
職場や自治体の健診では胸部X線検査が標準で
行われていますので、最低でも1年に1回は健診を受けて
万が一にも、大切な人達にうつしてしまうことがないよう
心がけましょう。