うつ病検査で測定する『コルチゾール』という物質は、過度なストレスで分泌量が増加する
うつ病の客観的な診断が可能に
これまで“うつ病”の診断は、
患者の訴えと医師の主観による診断が中心で、
客観的な診断を下される機会があまりありませんでした。
それは、うつ病が「本当に病気なのか」
「甘えではないのか」といった偏見を受け、
理解を得にくい病気である一因であったかもしれません。
これまでも、血液検査や脳の働きを画像で見るなど、
具体的な判断材料を得られる検査方法が
開発されてきました。
最近では、唾液内の分泌物を調べることで
手軽に診断ができるようになってきました。
この方法なら痛みもなく、
比較的短時間・低価格で済むと、期待が高まっています。
ストレス状態で上昇するホルモン
うつ病の唾液検査は、
唾液を採取するスポンジを何度か噛み、
唾液をしみこませるという簡単な採取方法で行われます。
そして、唾液内の「コルチゾール」という物質の
分泌量を測ります。
この物質は、
採血を行い血中濃度を測ることも可能ですが、
唾液検査ならば患者の負担を軽減させて
同じ結果を得ることができます。
ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールは、
心的なストレスに対抗するため分泌されるホルモンです。
長期間にわたって強いストレスを受けた時に
数値が上がりますので、
必ずしもうつ病であるという確実な診断はできません。
しかし、うつ病の自覚がある場合、
もしくはうつ病の自覚はないが
他の身体的症状があるといった場合に、
診断の大きな指標となるのです。
仮面うつ病の発見にも
うつ病には、動悸やめまいがする、
頭痛・腰痛など身体のどこかに痛みがあるなどといった、
他の病気とも考えられるような症状は感じつつも、
自分がうつ病であるという自覚のない
「仮面うつ病」があります。
このような症状の人は、
ストレスの自覚がないとも言えますが、
たとえ自覚はなくとも、
ストレスを受け続けていればそれを緩和されるための
コルチゾールは分泌されているのです。
コルチゾールの分泌量を検査することにより、
ストレスを数値化して確認ができるようになり、
気付かなかったうつ病を発見することにも役立ちます。
異常な減少は疾患の可能性も
コルチゾールは副腎皮質から分泌され、
免疫系、代謝系など多くの生体機能にかかわる
必須ホルモンです。
ストレスにより分泌が増加すると、
リンパ球の活動を弱め、身体の抵抗力を低下させます。
精神の健康が身体の健康に
具体的にかかわっていることがわかりますね。
なお、コルチゾールが基準値よりも減少している場合は、
主に副腎の機能になんらかの異常を
生じる疾患である可能性が高いとされます。