完治しないといわれる潰瘍性大腸炎。安倍首相を表舞台に戻した新薬のアサコールとは?
安倍首相を苦しめた難病『潰瘍性大腸炎』
2度目の登板で、水を得た魚のごとく精力的に責務をこなす
安倍首相は、前回の首相就任時よりも、随分と逞しく
健康そうに見受けられます。
潰瘍性大腸炎は、安倍首相の若い頃からの持病で、
病名が判明したのは大学生時代ですが、
最初にそれと思われる症状が現れたのは中学生の頃
だったとか。
そして、首相としての激務とストレスからでしょうか、
病状は悪化、志半ばで首相を退任したのは
2007年9月のことでした。
現在、首相は「この40年で一番体調がいい」と
言うほどに回復しています。
この5年の間に、潰瘍性大腸炎をとりまく環境は、
どう変化したのでしょうか。
長期間繰り返す、つらい症状
厚生労働省に難病指定されている潰瘍性大腸炎は、
大腸の粘膜に原因不明の慢性的な炎症が起こる病気です。
びらん(ただれ)や潰瘍ができ、痙攣性のひどい腹痛や下痢、
下血などにみまわれます。
日に何度も下痢症状を起こし、体重減少や貧血、発熱などの
全身症状にもつながって行きます。
体力も相当に奪われ、子供が罹患した場合には
成長障害が起こることもあります。
精神的にも不安定になり、
抑うつ症状が出現することがあります。
寛解(一時的に病状が治まった状態)と再発を繰り返し、
発病から数十年にわたって苦しめられることも
稀ではありません。
2009年、副作用の少ない新薬が登場
このような難病から、多くの患者を救いつつあるのが、
『アサコール』という薬です。
日本では2009年10月に認可され、
ゼリア新薬工業から販売されています。
人によって効果には差がありますが、炎症細胞の活動を
抑制する作用により、大腸粘膜の炎症を鎮めます。
飲み薬ですが、身体に吸収されにくいようにコーティング
されていて、大腸に到達してから有効成分メサレジンが
放出され、効率よく患部に効くよう工夫されています。
これまでの薬のような食欲不振や胸やけ、
ゲップなどの副作用も少ない画期的な新薬として、
多くの患者に喜ばれています。
寛解期でも食事制限が必要な場合も
安倍首相は、衆院選前にカツカレーを食べて健康アピール、
などと騒がれていましたが、脂っこいものや刺激物を
食べてもよいものなのでしょうか。
首相の場合は大丈夫だったのかもしれませんが、
「アサコールを服用して回復すれば何でも食べられるようになる」
というわけではないのです。
患者により回復の度合いも異なり、普通食を摂るのにも
自己判断ではなく、必ず医師に相談することが必要です。
寛解期には、あまり神経質にならなくてもよいのですが、
脂質(特に動物性脂肪) が多いもの、刺激物、繊維質の
多いものや消化しにくいもの、乳製品、炭酸飲料、
アルコール飲料などは避けるべきとされています。