手洗いがやめられない、ガスを消したか自信がない…。それは治療の必要な強迫性障害かもしれません。
考えに行動が支配される
誰しも、ゲンを担いだり
「自分ルール」を勝手に作って行動したり、
やったかやらなかったか急に自信がなくなって確認したり、
なんて経験、一度や二度はあるはず。
しかし、このような行為をやめようと思うのにやめられない
不合理だとわかっていてもやらないと不安で仕方がない、
という場合は、不安障害の一種である強迫性障害
という病気の可能性があります。
無意味だとわかっているのに、不安な考えが次々と
浮かんできて、それを打ち消すための行為を
やめることができない病気です。
強迫神経症という病名で知られていましたが、
現在では強迫性障害というのが正式な病名となっています。
強迫観念と強迫行為とは
自分の意思に反して繰り返し浮かんでくる、
根拠もないのに払拭できない不吉な考えや、
汚染や危険におびやかされているという恐怖、
ミスや見過ごしがあるのではないかという不安感などを、
「強迫観念」といいます。
これらの考えに伴う精神的な苦痛や不快感をぬぐいさるため
自分に強いる行為が「強迫行為」です。
主な強迫行為としては以下のようなものがあげられます。
・洗浄や清掃を繰り返す
・戸締りや火の元、スイッチなどを何度も確認する
・自分の行為が人に害を与えるのではないかと
異常に慎重に行動する
・捨てると後悔しそうで捨てられない
・縁起の良い/悪い数字や色、位置、順番などにとらわれて
自分の作ったルールに沿って行動する
性格による問題ばかりではない
強迫性障害は、いくつかの要因が絡み合って発症する
可能性が高いことは解明されつつありますが、
まだ原因は特定されていません。
もともと几帳面やきれい好き、完璧主義、
細かいことにこだわりが強い、といった性格の人に
起こりやすい障害ですが、性格や環境によるものとばかりは
言い切れない部分が多いのです。
脳の働きを調べると、症状が出ている間には、通常と比べて
活性化されている部分が何ヶ所もあることが確認されました。
脳内では、情報を伝達するのに必要な、
セロトニンという神経伝達物質が生成されています。
強迫性障害の治療に使われる薬で、
セロトニンに作用するものが有効であることから、
セロトニンの生成や機能が不充分であることが、
発症に関係しているのではないかと考えられています。
近年、めざましい進歩を遂げた治療法
強迫性障害の診断は、国際的な基準にもとづいて行われ、
その基準は数年毎に改訂されています。
それによって、症状の評価と重症度をチェックし、
治療の方針が決定されます。
薬物治療では、主に抗うつ薬が使われ、
強迫行為を行いたいという衝動を薄れさせます。
しかし、薬物のみで症状を完全になくすのは困難で、
認知行動療法などと並行して取り入れられることが
望ましいとされます。
認知行動療法とは心理学を用いた療法で、
カウンセリングを繰り返した上で、
強迫観念のとおりのことが本当に起きるかどうか、
身をもって実験をします。
そして、実際には不安や恐怖を抱く必要などない
ということを経験・学習します。
自分の考えているような嫌なことや恐ろしい結末
は起こり得ないと納得することで、
症状をなくしていくことができるのです。