常識を覆す研究結果!?善玉コレステロールは、とりたてて言うほど善玉でもない、かもしれない…?
善と悪、ふたつのコレステロール
体内に存在する脂質の一種であるコレステロール。
私達が生きていく上で不可欠な物質でもあり、
生活習慣病の元凶でもあります。
健康診断で血液検査をすると、
体内のコレステロール値がわかります。
数値が上がると要注意とされるのが、
LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールです。
コレステロールを肝臓から抹消組織へ運び出し、
血管内に放置していくため、
コレステロールが血管の壁に蓄積して
動脈硬化を誘発します。
かたやHDLコレステロールは、
この血管にこびりついたコレステロールを剥がして回収し
肝臓に戻す働きを持つため、
善玉コレステロールと呼ばれています。
厚生労働省が2008年より実施している
特定健康診査(いわゆるメタボ健診)でも、
コレステロール値について検査・指導が行われています。
開発が中止された善玉コレステロールを増やす薬
ところが、善玉と呼ばれてきたHDLコレステロールは、
必ずしも正義の味方とは限らないのではないかという声が、
ちらほらと聞こえ始めてきました。
もし本当ならば、HDLコレステロールを増やすことを
推進している現代の常識を覆す、大きなニュースです。
HDLコレステロールの働きを利用し、
動脈硬化症の患者に注射して症状を軽減する治療法は、
これまでも行われてきました。
その発想の延長上で、血中HDL濃度を上げる
薬の開発が進められていたのですが、
昨年その開発が中止されるという出来事がありました。
臨床試験において、その薬を使用しない場合と比べて
動脈硬化から起きる心臓などの病気を予防する効果に
差がみられなかったことが原因です。
善玉コレステロールが増えすぎて怠けている?
開発が中止されたのは、「CETP阻害薬」の一種です。
HDLは、回収して肝臓に戻すはずのコレステロールを、
LDLに渡してしまうことがあります。
この働きの仲介役を果たしているのが、
たんぱく質の一種であるCETPです。
遺伝的にCETPの量が少ない人は、
HDLの血中濃度が高く心臓病リスクが低いと言う調査があり
人工的にCETPの働きを抑える薬を
開発しようとしたのでした。
しかし結果的に、CETPの働きを阻害すると
HDLが増えすぎることがわかりました。
この状態の時のHDLは、
コレステロールを回収したものの、
抱え込んだまま動きが鈍くなり、
正しく働いていないのではないかというのです。
有害かもしれない「善玉」コレステロール
更に驚くことには、HDLの中にも身体に悪さをする
「悪玉HDL」(ややこしいですが)が
存在するかもしれないという研究も発表されました。
LDLはほぼ1種類なのに対し、
HDLは多くの種類が存在し、
その質に優劣がありそうだというのです。
つまりHDLは、
量より質を重視すべきかもしれないとのこと。
善玉コレステロールと呼び、
当然のように増やすことが推奨されてきましたが、
まだまだ未知の部分も多かったということなのですね。